Fact or Fiction

エアプレイの魔術師びーるーむがお送りする妄想劇場

【ネタ】小話・読み物【暇つぶし】

何事もない平和な日常、平凡なお昼の出来事である。
某国の党首が演説をしている様がテレビに中継されている。
大きく拳を握り、気合いの入った声で観衆の注目を引いている。
平和を唄う演説なのだろう…… ハトが飛び交う演出も行われた。
特に興味を引くような内容では無い、政治目的の活動に過ぎないだろう。

締めの言葉か勢いのある言葉と共に演説は終わり民衆は大きな拍手を返す。
某国の党首も良い気な表情で手を振って応えて見せる。

そんな時……

テンポのずれたゆっくりな拍手と小さな歩幅で党首に近づく男がいた。
自然と民衆は道を開くように左右に別れて退いた。
それは、その男があまりに不自然な格好をしていたからである。
足元まではある黒いマントに身体全てを覆い、頭には青い色をした
フルフェイスのヘルメットでポツンと球体がマントの上に乗っている様。

テレビ越しに見ていても分るイレギュラー
現場に走る緊張、何気なくテレビを見ていた人間達も目を丸くして
釘づけになってしまう。
党首のボディーガードであろう当然のように黒服の大柄な男達が数名現れ
その男を囲うように武器を取り出して迫って行く。

何か音が聞こえる。声であるかもわからない。
微妙に周波数を違えた気持ちの悪い音が少しずつ頭の中に入ってくる。
ヘルメットを被っている男の口元が読めない為、喋っているのか分らない。

数メートルの距離を置いて武器を付きつけられた男の顔色が変わる。
顔色が変わる。中継されているテレビを見て唖然とする。
男のヘルメットの色が絵具を混ぜたように蠢きだす。時々青の中に緑や茶色が浮かぶ。

話の内容は一切分らないがテレビの向こう側では会話が行われている。
言葉を投げかけられたのか党首の表情が歪んでいたことから間違いは無い。

すると、男は手をマントの胸元へと忍ばせる。
怪しい動きと判断したのであろうボディーガードである黒服の男は
その手にした武器"銃"の引き金を素早く引き容赦の無い一撃で
男の頭を一瞬で打ちぬいたのである。

その瞬間、非常に強い地鳴りがし大地が一瞬ざわついて一度だけ大きく縦に揺れる。
足元をすくわれて倒れる民衆も多い、テレビ中継を見ていた他の国にも揺れが響く。

薄ら時超えていた超音波のような音が少しずつ近く感じるようになり
やがて呼びかけているような声である事に気付く。

頭を打ち抜かれた男は尚も動きは止まらず。
胸元から手を引き抜くと……

そこには1枚の"名刺"が握られていた。


「コンニチワ」


鳴り響いた携帯の地震速報によるととある海に隕石が落ちたと流れる。
不気味な男が名刺を差し出しながら頭を軽く下げる仕草に釘付けとなる。
良く見てみると…… 頭の上に乗っているのはヘルメットでは無い。
それは、まるで"地球儀"そのものである。
目を凝らして見ると銃で撃ち抜かれた場所と震源地が重なって見える。


「コノ度、我々ニ寄生スル害虫ノ駆除ニ参りました」


頭に直接語りかけるような言葉が唐突に理解出来た。
表情の無いはずの頭に不敵で不気味な笑みを浮かべて言葉が続く。


「我々ハ"地球人"デス」

 


その日、人々は母なる大地に宣戦布告を受ける事となる。

 


続かない