Fact or Fiction

エアプレイの魔術師びーるーむがお送りする妄想劇場

【ネタ】誰も知らない先導者 0話1話【小説】

 

 

 

「ボク達は一体、何を信じてここまで来たのだろう」

果てた荒野のような世界に一人の青年は立っていた。
吹き抜ける風は虚しく音を立て、そこに何も無い事を教えてくれた。

ストライド・ジェネレーション……」

"超越"とは過去・未来・別次元から強大な力を持つ存在を「超越者」として
召喚する現象であった。突如現れた"ゼロスドラゴン"及び"破壊の竜神"に台頭する為
彼等は、その力を行使し…ありとあらゆる世界線から強大な力を呼び起こし奮闘した。

「その結果が…コレかよ」

拳を握りしめるも怒りを吐き出す先など存在はしない。
青年は静かに瞳を閉じ、太陽の光すら射さなくなった空を見上げる。


"過去""未来""別次元" それらの力を呼び起こし続けた結果。
強力なタイムパラドックスが発生し"現在"が滅んでしまったのだ。
世界の崩壊はあまりに一瞬で対策を考える暇などは無かった。
突如として崩れ行く世の中に抗う事も無くただただ流されるだけであった。


「どうすれば、こうならなかった……のだろう」

膝を尽き崩れる青年の頬を涙が零れおちる。
一時は"破壊の竜神"を倒した喜びに世界が激震し、戦いの終わりを迎えたかと思った。
だが、この結末はあまりにも厳しすぎるものであった。


「私はこうなることが分っていたよ」
「……?」

落ち着いた喋り声に頭を上げる。そこに立っていたのは無垢な少年であった。
明らかに喋り方や雰囲気と年齢が合っていない様子に戸惑うも耳を傾けてしまう。

「私は、あの扉を開けた時から……こうなる事を予想していた。
 そして、その対策として…… 滅ばない未来を手に入れる為、奔走し続けた」
「この世界は…… どうすれば‼」

強く食ってかかる。少年は静かに瞳を閉じて口を開く。

「世界を変える覚悟があるかい?」
「こんな結末になるぐらいなら……」

瞳を開けた少年が強く拳を握る、その背後に大きな扉が現れた。
その禍々しい雰囲気を放つ扉に青年を思わず息を飲む。

 


「世界を変える。君を過去に送り届ける。
 特異点である彼ほどでは無いが、また私も《ギアクロニクル》に選ばれし者だ」
「過去へ…… また、みんなに会える?」

眉をしかめながら少年は応える。

「何が起こるか分からない。記憶を持っていけるかは保証できない」
「それでも…… 僕には守りたい世界があるんだ」

開かれた扉はまるでブラックホールであるかのように時空を歪ませている。
青年は静かに歩を進めて扉へ近づいて行く。強く確固たる決意を胸に。

「完全なる未来の為に」

少年は不敵な笑みを浮かべ青年を見送った。

 


―――
 暗闇である。意識があるのか無いのか青年には分らない。
 懐かしい声が聞こえる気がする。暖かく迎え入れてくれる仲間の姿が見える。
 思い出や記憶が空間に奔流し、走馬灯のように流れては空間に溶け込んで行く。
 最期に白い剣を持った剣士が言葉を投げかけてくれたが、その声は青年には届かなかった。
 記憶が薄れて行く。大切であった彼の名前すら思い出せない。


「えーっと……君ならどう生きる? 先導アイチ‼」

 

 

"誰も知らない先導者" 第0話 END 

 

 

 


「えーっと……君ならどう生きる?先導アイチ‼」

気付けばそこは学校の教室であった。眠っていた訳ではない意識が遠くに行っていた。
"ぼーっとしていた"という言葉が似合うであろう。歴史の教師らしき人物が青年……
いや"少年"に声をかけている。

「どうした先導君?イメージ、イメージして」

見た所、歴史の教師は外国人である。テンションの高い声で少年に語りかけて行く。
少年は突然の出来事に驚き戸惑う感じで上手く言葉が出てこない。

「僕は……後ろの方で……いつでも逃げられるようにしてます」

クスクスと周りの生徒が笑っているのが聞こえてくる。
中には周りを気にせず大きな笑い声をあげる者もいる。

「先導君、戦国の世なら生きるための良い考えかもしれませんが、
 イメージの中くらい、もっと自分を活躍させてもいいのでは?」

教師が一言付け加え少年に座るように指示を出す。

「す、すみません」

小さな声で返事をして席に座る。
ふと、机の上にあるノートの上に無造作に置かれた一枚のカードが目に入る。
裏向きに置かれたそのカードを手に取り表を向ける。


「ブラスターブレード……」


少年の脳裏に言葉が過った。一瞬にして脳裏に過る聞こえないはずの声。
聞き覚えのある声、助けを求め危機を伝える声。それはかつての仲間の声。
この世界に来る途中に声が届かなかったその戦士の声は……今、彼に届く。

「……」

言葉を失う少年は瞳を大きく開く。
静かに回りの風景、教室にいる生徒、黒板に書かれた文字。
そして、日付を確認する。

「このカード……」

少年は気付いた。かつて仲間であった"ブラスターブレード"の異変に。
周りに見えるクラスメイトや学校の様子は、今まで体験したモノと同じである。

「パワーが10000??」

記述された異なる数字に眉をしかめる。
知らぬ間に授業の終わりを告げるチャイムが鳴っていた。
少年は頭の中で今起きている事象について考えをまとめていた。

(過去に戻った訳じゃない。
 ヴァンガードのカード達は違う進化を遂げている)


「そうか…… つまり、この世界は……」

 


"誰も知らない先導者" 第1話 END